大判例

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東京高等裁判所 昭和25年(ラ)79号 決定

民事訴訟法によつてなした抗告裁判所の決定に対しては、同法第四百十三條の規定に從つてその決定が法令に違背したことを理由とする場合に限り、更に抗告をなすことができるのであるが、民事訴訟法第三百五十六條の規定による和解は訴訟防止の目的で訴提起前に申立てるのを通常としても、訴提起の後にはこれを申立てることができないものでなく、かような申立も必しも不法としなければならぬことはない。既に同一訴訟物につき同一請求趣旨の訴が提起されてあつても、和解の申立は訴でないからこれを以て二重訴訟と目することはできない。只和解が不調となつたときに双方の一致した申立があれば、訴訟の提起があつたものと看做されるから、かかる場合には二重訴訟の問題が生ずることになり、新しい訴の提起と看做される行爲は禁止される。從て当事者双方は既に同一訴訟物につき同じ趣旨の訴が提起されている場合には、民事訴訟法第三百五十六條による和解の申立を訴訟手続に移すことはできないに過ぎないものであり、この故に同條の和解は同一訴訟物につき既に訴訟が係属しているときは申立ができないとすることはできぬ。又、本件抗告人の和解申立には和解條項書を同時に提出しており、かかる趣旨の和解を求めたものであるから、請求の趣旨は自ら明白であり、特に請求の趣旨と表示してこれを掲げる必要はない。從つて原審が本件和解の申立を適法と認めたのは正当であり法律違背の点はなく、論旨第一点は理由がない。

次に原審は抗告人等が本件和解をなすの意思があつたこと、和解を取扱つた東京簡易裁判所へ、和解期日に抗告人等より期日の延期を求めたとしても、同期日に出頭した弁護士平田政藏が抗告人等の代理権を有しておつたこと、本件和解が不成立又は無効であり或は取消されたものでないことは、原審が挙示の証拠資料によつて疏明があつたとしたもので、該証拠によればかかる事実も一應窺い得られないことはない、これを非難するのは原審の専権事項を云爲するものであつて、論旨第二乃至第四点も理由がなく、原決定には何等法令違背の点がない。仍て本件抗告はいづれも理由のないものと認め主文のように決定する。

(裁判官 中島登喜治 箕田正一 小堀保)

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